TOP > 開発製品について > 多発性硬化症治療薬MN-166

多発性硬化症は、寒いところに住む20-40代の若い白人に多い病気で日本人の患者さんは非常に少なく、厚生労働省では難病指定されています。
人間の体は、頭脳が司令塔となり体の各部分に司令を下して、体全体の統括をしています。その司令は神経という組織によって発信され、伝達されています。これらの情報は電気信号として瞬時に伝わりますが、神経は電線のビニルのような絶縁体でおおわれ、ショートしたりせずに、すばやく司令を伝達しています。多発性硬化症はこの神経の絶縁体を自ら破壊してしまう病気です。従って、司令塔から全身への司令が適切に伝わらなくなるので、尿をもらす、手足のしびれ、痛み、手足をうまく動かせない、目が見えない、記憶できない、憂鬱になるなど多彩な症状を示します。
原因は、リューマチと同様に自己防御機構の異常と言われています。つまり、人間は外部からばい菌などが侵入すると、それを攻撃・破壊して自分の体を守る機構を生まれながらに持っていますが、この異常により自分自身の体を攻撃・破壊してしまうことがあります。リューマチは関節の骨膜を、多発性硬化症は神経の絶縁体を攻撃・破壊してしまう病気です。
多発性硬化症は難病とされ、よい治療法がありませんでしたが、近年ベータ・インターフェロンという注射薬が出現し、病気の進行を抑えることができるようになりました。しかし、長期間注射を必要とすること、注射後風邪にかかったような副作用があること、非常に高価であること、効果が必ずしも十分でないことが問題とされています。
自己防御機構が働くと、腫れる、痛む、発熱する、赤くなるなどの炎症が起きます。MN-166はこの炎症を抑制することや神経を保護することにより、多発性硬化症による神経の絶縁体の破壊を抑えることを狙った飲み薬として開発されています。この薬はケタスというブランド名で杏林製薬(株)により長年炎症を抑える飲み薬として販売されてきましたが、日本の医師が多発性硬化症の患者さんに投与したところ、多発性硬化症の治療薬として有望であることが判明しました。
現在、より多くの患者さんに投与して安全性と有効性をみるフェーズ2臨床試験が完了しました。ケタスは23年に渡り約320万人の人が長期に服用し、安全性が証明されています。東欧で実施したフェーズ2臨床試験においても有効性において良好な結果が得られており、安心して服用できる治療薬として期待しています。
前述のベータ・インターフェロンという注射薬が出現し、多発性硬化症の再発の防止が可能になり、多発性硬化症治療薬の市場は急拡大しました。現在、ABCRと呼ばれる治療薬(A::アボネックス・バイオジェンIDEC社、B::ベタフェロン・バイエル社、C::コパキサン(グラチラマー塩酸塩)、R::レリーフ・メルクセローノ社)のほか、抗体医薬である新しいメカニズムのナタリズマブ(商品名:タイサブリ・バイオジェンIDEC社)という注射薬の販売特許を取得し、市場拡大に拍車をかけています。ABCRとタイサブリの2010年度の売上高はそれぞれ1960億円、1220億円、2580億円、1670億円、970億円となっており、この5剤の売り上げの総額だけでも8400億円近い市場を形成しています。また、2010年9月にはノバルティス社のジレニア(FTY720)が米国とロシアで承認され、2011年には欧州や日本でも承認され、初めて飲み薬として注目されています。これらの新薬の登場により各製薬企業とも開発に力を入れはじめましたが、有効性、安全性、利便性、経済性の少なくとも何れかにおいて既存の薬に対して優位性を示す必要があります。ABCRと呼ばれる治療薬では、多発性硬化性の再発の抑制や寛解期間の延長する効果はありますが、進行型の多発性硬化症には効果がありません。先術したナタリズマブでは有効性においてはABCRより優れているといわれていますが、進行性多病巣性白質脳障害という副作用で死者が出たためこの薬の使用には十分な配慮が必要と当局から注意されています。新しく承認されたジレニアにおいても、有効性についてはABCRと同等かそれ以上の効果を有しますが既に副作用で11名の死者が出たと報道されています。MN-166はケタスという商品名で長年販売されており安全性は十分に保障されており、経口薬である利便性や神経保護作用という新しい作用効果を有する薬で、再発・寛解型の多発性硬化症のほか進行性の多発性硬化症にも有効な薬と期待されています。